シアターコックーン 2012/8/22(水) 19:00時
Bunkamura 大人計画 演出 松尾スズキ
松尾スズキ 大竹しのぶ 古田新太 阿部サダヲ 多部未華子
「薬剤被害で奇形となった少年、狂気の主婦、歌舞伎町の風俗嬢等々 社会的なマイノリティが精一杯生きる姿(場合によっては悪意をもった生き様もまた人の姿)を描き出した傑作戯曲。 松尾スズキ 作・演出 1991年初演の再演」
(感 想) 薬剤被害で人の二倍もでっかい頭をして生まれたふくすけ、 歌舞伎町でのし上がった狂気の主婦エスダマス、マスを探し続ける夫のエスダヒデイチ、ヒデイチを助けるホテトル嬢フタバ、やがて神のお告げを受け、宗教ビジネスにのめり込んでいく盲目の女性サカエとその中途半端に悪い夫のコオロギ、そんな人々が破滅に向かって突き進んでいく様を通して、それぞれの心の内を描き 出そうとした作品。
主役のふくすけは阿部サダヲ、マスは大竹しのぶ、マスの夫は古田新太、ホテトル嬢には何と多部未華子、サカエを平岩紙、その夫コオロギをオクイシュージが演じている。
「生まれてこない方が良かった時、人はどう生きるか。 それでも宗教も未来も来世も信じる事が出来ない時、人はどう生きるか!」
この言葉を吐き出す、障害者ふくすけ「阿部サダヲ」が紛れも無くこの芝居の主役なのであろうし、”悪もまた人の生き様なり”が 、この芝居の一つのメッセージなのだろうが、強烈な存在感で舞台を引っ張る「大竹しのぶ」に芝居を乗っ取られてしまっているように、感じられて仕方がない、まるで「大竹」演じるエスダマスの狂気に芝居が乗っ取られてしまっているかのようであった。
多部未華子は 相変わらず、可愛らしく印象深く演じている。芝居の中ではやさしさと残虐なまでの好奇心をもって古田演ずる、エスダヒデイチと絡んでいく。女性の持つ奔放さ、内に秘めた残酷さを演じさせたら、今一番か?今年の新国立の「サロメ」といい、この手の役は、はまり役か?
多部未華子は 相変わらず、可愛らしく印象深く演じている。芝居の中ではやさしさと残虐なまでの好奇心をもって古田演ずる、エスダヒデイチと絡んでいく。女性の持つ奔放さ、内に秘めた残酷さを演じさせたら、今一番か?今年の新国立の「サロメ」といい、この手の役は、はまり役か?
(総 評) 700席を超えるシアターコックーンが全38公演、立ち見席を設けるほどの超満員、有名俳優・女優を配して、興行的には 大成功なのだろう。もちろん、話の展開の面白さ・ギャグを含めて2時間15分、飽きさせない舞台の仕上がりはさすがでした。ただ、前述の通り、個々の役者の自己主張が強すぎて、毒の有るセリフ・エログロな演出まで使いながら、芝居全体としては、メッセージを発しきれなかったように思える。いい役者を使えば、いい芝居が出来るというわけではなさそうである。そもそも、作・演出の松尾スズキ氏は社会の マイノリティ、底辺の人々の心の叫びを描いて支持を得てきた人であるかと思う、それが、シアターコックーンという商業演劇の華々しい、大きな小屋で興行を打つということそのものが、自己矛盾を孕んでいたのではないかと思われてならない。
とてもおもしろく、飽きさせない 良く出来た芝居であるが、作者本来のメッセージを失ってしまった芝居で有ったように思う。
とてもおもしろく、飽きさせない 良く出来た芝居であるが、作者本来のメッセージを失ってしまった芝居で有ったように思う。
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