世田谷シアタートラム 2012/6/24(日) 14:00時
演出:長塚圭史 企画協力:葛河思潮社
主なキャスト:真木よう子 江口のりこ 梶原善 黒沢あすか他
高速道路が原因不明の渋滞に巻き込まれ、そのため隔離された高速道路上で繰り広げられる、人間模様を描いたもの
(感 想 等) ラテンアメリカの作家フリオ・コルサルタルの幻想小説「南部高速道路」をベースに長塚圭史が演出した芝居。長塚圭史の演出と真木よう子の演技が見たくて観劇。
シアタートラムという小屋の問題もあろうが、舞台は客席が東西南北に作られた真ん中に設定されていて、舞台上には基本的に何もない。渋滞に巻き込まれた車は演者がもつ”傘”が表現するというもの。最初の内は、傘=車という舞台装置のあまりの貧困さに違和感を感じながら見ていたが、次第に傘=車に引き込まれていったのは演出家のワザか?
また、現実離れした話であるが、渋滞が1シーズンに及ぶにも関わらず、最後まで登場人物を名前で呼ぶことはなく、常に車の名前「マーチさん・グロリアさん・ミニさん・・・・」、役割名「バスの運転手さん、リーダー」で呼び続けるところに、この話の現実と幻想が交差する独特の世界があるように思う。見る者には非日常がいつの間にか日常として埋没していき、日常の中に非日常を見出していくような奇妙な感覚に引きづり込まれていくように思う。
この作品は、台本がなくワークショップを通して作られたというから、2時間を超すこの芝居を演じ切った役者さん達は大変であったろうと思う。
最近、テレビ・映画で活躍の真木よう子はこの舞台の中では最後まで「ミニさん」と呼ばれているが、彼女一人が常に冷静で、日常・非日常に埋没するこなく、この芝居の中で常に「現実」で有り続けているような気がする。観客である我々は彼女を通して、現実と幻想の交差点を感じられるような気がします。演技としては、この独特の芝居の中で、上述のような役回りをうまくこなし、存在感を発揮していたように思う。
(総 評) 見終わった後に、何とも不思議な肌触りが残る作品である。本来原作の意図するところは、良く分からないが、非日常が日常に埋没していくさまが、滑稽で有ると同時に背筋が寒くなるようなぞっとした感覚を覚える作品である。
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