2012年6月8日金曜日

京劇 西遊記


日経ホール  2012 6月8日 19時

(感 想 ) 今回の公演は北京京劇院によるもの。北京京劇院は中国最大規模を誇り、多くの名優を育ててきた歴史のある劇団。国家重点京劇院団にも認定された、中国京劇界の中心的存在。日本人には梅蘭芳(メイランファン)の劇団と言った方がなじみ深いか? 日中国交正常化40周年という記念の年を飾るに相応しい公演かと思われる。
演目は西遊記「孫悟空大鬧天宮(だいとうてんきゅう)」、西遊記というと日本では孫悟空が三蔵法師のお伴をして天竺へ 旅する道中の冒険を思い浮かべがちですが、これはそのずっと前、
孫悟空が本拠地花果山で「サルの王様」を名乗り、より強くなるための方法を求めて子ザルたちを手下に従え大暴れしていた頃の物語です。西遊記の中では人気の演目。

(公演について) 内容は、孫悟空が花果山で子ザルたちを従え「サルの王様」を名乗っていたころ、孫悟空に如意棒を奪われたと龍王が天の玉帝に訴え出たところ、孫悟空に役職を与えて
おとなしくさせようという太白金星の策が採られ、馬屋番、桃園番と順番に役職が与えられるが、 そのたびたび、大した役職でないことから、孫悟空が怒り出し、大暴れを するというもの。 最後は、食べると不老長寿が約束される仙桃や不老不死の金丹を食べつくして大暴れし、玉帝の
派遣した、李天王も撃破し、手がつけられなくなってしまうというもの。

 前半はまだ、サルのころの面影も残っていることから、表情づくりやセリフ回しを得意とする道化役の李丹(リーダン)が後半は派手な立ち回りが多いことから、立ち回りを得意とする、ジャン・レイが演じている。今回の公演では二人の役者が演じ分けることで、役の特徴を際立たせていたようである。

(総 評) 京劇を観劇したのは、今回が初めてでしたので、とても新鮮でした。字幕つきでは有りますが、分かりやすい話で有ることもあり、見ていると何となく話の展開が分かり、エキサイティングな動き・踊りと音楽に引き込まれて行きました。ただ、なんと言っても、第一印象は「なんて歌舞伎とにているんだろう・・・・」というものでした。

香川照之が歌舞伎挑戦前に、この北京京劇院で京劇体験を行ったことが頷けます。
 歌舞伎役者の立ち回り・見栄を切るところ、それに対するお客さんの「よっ! ○○や!」という掛け声・・・京劇も全く同じように役者のポーズ(見栄)、お客の掛け声(今回日本公演は少なかったが)とあまりに似ているのでびっくりしました。
 
 全体的には前半部分のリー・ダンの演技については、京劇らしい、立ち振る舞い・表情づくりを楽しむ部分なのだろうが、席の位置の問題もあろうが、なかなか掴むことが出来なかった。後半のジャン・レイの演技については、声に伸びが有り・体のキレもよく、立ち回りシーンは楽しめた。

 ただ、全般的に芸・演出が古臭く感じられ、昔からの芸を同じように続けてきているように感じられてならないし、今の時代ならキレのある体の動きであれば、「シルクドソレイユ」でも「K-バレエ」でも、もっと躍動感を楽しめるように思われる。
 歌舞伎も概ね同じころ、庶民の芸能から発達し、現在も日々進化し上演されていることを考えると、京劇の世界は止まっているのかな?といった感想をもってしまいます。私見ですが、このことは、「京劇」が近代、歴史に翻弄されてきたことと無縁ではないように思えます、文化大革命による弾圧がなければ、京劇もより舞台芸術として洗練され・花開いていたように感じます。やはり、文化は健全で平和な社会があってこそ花開いていくものなのかなと思います。 
 「京劇」鑑賞後、何となく胸に残ったわだかまりは、これだったのかなと思います。



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