2012年11月14日水曜日

日の浦姫物語

シアターコックーン 2012/11/14 19:00

作:井上ひさし 演出:蜷川幸雄 

こまつ座 ホリプロ

大竹しのぶ 藤原竜也 他

井上ひさし生誕77フェスティバル2012 第7弾として蜷川幸雄演出で上演されたもの



  井上ひさしの作品を蜷川幸雄演出、大竹しのぶ主演で公演とのことで興味が有り観劇。 

 狭い社会の中に似たもの同士がひしめき合う日本の社会を「近親相姦的社会」とし、ギリシャ悲劇・グレゴリオ伝説などを取り入れて書いた作者中期の作品。物語は薄汚れた説教聖(木場勝巳)と赤子連れの三味線女(立石涼子)が「日の浦姫物語」なる説教節を語るという、劇中劇の形式。

話の流れとしては、平安時代奥州で藤原成親が子を授かったが妻は無くなり、それと引き換えに美しい双子の兄妹(<稲若>藤原竜也、<日の浦>大竹しのぶ)が生まれる。二人は中睦まじかったが、父成親の無くなった夜、禁忌を犯す、たった一度の交わりで子を宿してしまう。子は神仏に身をゆだねるとのことで、海に流されるが、18年後、若武者姿の魚名(藤原)として娘の前に現れ、姫の窮地を救う。魚名は姫と夫婦となるが、2人は母子だったことが判明する。2人は懺悔し、共に両目をついて別れ別れとなるが、最後は贖罪の奇跡が起こるという話。
近親相姦というタブーを描きながら、それを、言葉遊びを交えながら、喜劇へ転化するのは、さすが井上流というべきか。言葉遊びを続けつつも、緊迫感を失わないのは、大竹・藤原の力量か? また、娘であり、母であり、妻であり、懺悔を続ける「日の浦」を多彩に演じきっている大竹の演技が素晴らしい。彼女はやはり、主役で自らをこれでもかこれでもかと押し出す役柄ではとても生える。                              

最後に語り手の2人も同じ運命を告白し、両目をつぶして懺悔するが、周りの人々(ここでは現代人)は石を投げて追い立て責める。最後に周りから許されない説教聖=木場が大きな声で「ヘエー」と発し、舞台を去っていく、ここでは、説教聖=木場がタイトルロールの大竹にも負けない存在感を出すが、これは「近親相姦的日本社会」にたいする痛烈な批判なのだろう。これが正に作者「井上ひさし」の声だったのだろうと思う。                              

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